IMPRESSION " 台北ライブレポート "
written by Thomas 

おもちゃみたいに小さい飛行機から連絡通路に出るとむわーと蒸し暑く、ここが沖縄より南の国、台湾だということをあらためて感じた。とうとう来てしまった。
半年前にJOJから台湾でライブをやる計画だと聞いた時はほとんど夢の中みたいな話だったのだが、一週間前になり航空券を買ったりパスポートを印刷したりはじめた時にはいよいよ現実の重みがずしりと脳天にのしかかり、当事者でもないのにほとんど恐慌状態になっていた。
台湾にライブを見に行くだけなのにここまで心が乱れるのはなぜか。その理由はこのライブが開催されるに至った経緯にある。

すべては在台湾のJOJファンの掲示板への書きこみからはじまった。
そこから「台湾でライブしてくれたらいいなあ」という話題になり、いつのまにかプロモーターも話に加わって3月に台北でライブ決定!ということになってしまっていたということらしい。
最初の書きこみからライブ決定までの詳しい経緯はよく知らないが、とにかくインターネットがなくてはこんなことは無理だったはず。インターネットを生み出した冷戦とDARPAに感謝である。

到着した翌日の晩、ホテルのロビーに今回のライブ開催の発端となった在台湾のJOJファンがやってきた。その数、3名ばかりか。すさまじいばかりの熱烈歓迎ぶりで、そのうちの一人など、わざわざ台湾の他の都市からやってきたほどの狂熱ぶりである。
その後、近所のカフェに場所を移し、みぶりや筆談も交えてなごやかに交流が進んだ。部外者の私から見ても気持ちのいいヤツラである。やがてプロモーター氏もやってきた。プロモーター氏は温和な印象の青年であった。この人は台北でも有名なライブハウス「聖界」をも運営している精力的な人間である。活動は精力的だが外見はほっそりしていてそのギャップがおもしろかった。明日はライブである。在台湾ファンの皆様と熱烈な別れをしてJOJはホテルへ帰っていった。

こうしてレポートを書いている私もただの1ファンである。よくわからないうちに行動を一緒にすることになっていた。これは恐らく任務を与えられているのであろう、と大人なので勝手に判断し、JOJをどこからか狙っているかもしれない猛毒の吹き矢や鏑矢に対し警戒することとした。毒矢はあたるとライブどころじゃないし、鏑矢は刺さると痛いので大変だ。これは非常に重要なミッションである。幸い、滞在中は誰もJOJを吹き矢で狙ったりしなかったので私は役立たずで終わった。とてもよいことである。だから、台湾はとても治安のよい場所だ。ただ、スクーターの数が異様に多いうえに、タクシーの運転が結構乱暴なので慣れるまでがなかなか恐ろしい。それを除けばなかなか楽しい場所だ。

ライブ当日の昼は、台湾大学の前の書店のCD売り場の一角でファンとの質疑応答の場が設けられていた。通訳もついていて本格派である。ファンの質問も創作の深い部分に関するものが中心で、「好きな色は何か?」のような浅い質問がまったくなかったのには関心した。書店の中をよく見てみたら入り口に大きくJOJのポスターが張ってある。JOJのCDも棚に並んでいる。日本では滅多に見られない光景だ。
JOJは「歌徳」というジャンルに入っていたが、はてこれはどういう意味か。質疑応答は2時間にも及び、終わったのはライブ3時間前。CHAKOさんが疲れていないか心配だったけれども、ちゃんと歩いているようだったので平気らしい。



会場のライブハウスは普通の造りで、120人くらい収容できるくらいの大きさ。JOJの前に別のバンドが演奏する。
その間、CHAKOさんはドイツからやってきたホワイトラビッツレーベルの運営者にヘアメイクをしてもらい、準備を整える。
観客はほぼ満員、みんなタイプがバラバラである。ドイツでのライブの時は一応観客にまとまりがあったのだがここでは多種多様な人間が来ている。とても興味深い点である。台北のゴシッカーが集まるかもしれないということで期待していたのだが、皆精神的ゴシッカーらしく、日本や欧州にいるような服装ゴシッカーがいなかったのが少し残念であった。

そうしてとうとうJOJの登場である。
私はビデオ撮影という役目なのに、席を確保するのを忘れてしまっていて多いにあせる。
イイ場所に座っている観客にちょっと場所を譲って欲しい旨を伝えると快く応じてくれたので一安心。
いよいよライブが始まる。


CHAKOさん登場と共に会話が止み、聴衆は音の一片も逃すまいと耳をそばたてているのがわかる。
正直いって、私は少し怖かった。もし不真面目な観客がいたら暴れていたかもしれなかったのだがそんな心配は必要なく、皆、日本から初めてやってきた音楽家の歌に聴きいっている。あっという間に激動の前半部分が終わり、後半が始まるまでしばらく休憩時間。

休憩時間の間も、観客は暴れたり走りまわったりすることなく、皆座って談笑している。台湾の観客は皆大人だ。
そうしてめくるめく後半部分が始まり、私の大好きなA MARCH FOR NEW EUROPEAN が歌われ(この時、目を閉じて聴いていたのだが、寝ているものとドイツから来たSONJA氏に思われたらしく、フラッシュで起こされた)、最後に、アンコールが数曲。このあたりでJOJは完全に観客の心を掴んでいた。仲間はずれの子はいないかー、と観客をファインダーを通して観察してみたが、大丈夫、冷めてる悪い子は一人もいなかった。

台湾のことを私はよく知らない。50年くらい前まで日本が統治していたとか十数年前まで戒厳令がでっぱなしだったとかそんなことしか知らなかった。JOJのライブで台北の観客の間に身を置いて、今までほとんど何も知らなかった国のことがすこしわかったような気になったのはたぶん今回の収穫だろう。バックグラウンドも言葉も違う人々が同じ音楽で熱狂する。JOJの音楽の基本があったような気がした。
JOJ達が今回のライブでなにをつかんだのかは、他人の頭の中なので私が推量することではない。 
ただひとつ確実に言えるのはそれが次の作品にフィードバックされてとんでもないなにかに変貌してまた私達を驚かせる、そのことだけだろう。