IMPRESSION " JACK OR JIVE  ドイツライブ2001 参観日記 "
written by Yakamoto

白樺の林の中を私は地図を片手にお城を探してさまよっていた。早く着かないと日が暮れてまう。いつからか知らないが二匹の黒い猟犬が私の跡をつけている。でも振りかえる勇気がないのでそれらの存在はかすかな息遣いでしかわからない。街を出て数時間、そろそろあきらめようか、と思いはじめた頃、向こうから老婆が歩いてきた。ここまで来たんだから、と老婆に道を尋ねた。老婆は盲いていた。老婆は無言で骨ばった指で森の中心を指差した。そちらに進むべきか考えていると背後のはっはっという息がだんだんと近くなってきた。 どうやら進むしかなさそうだ。やがて錆びかかった鉄の門が見えてきて、潅木の間からお城というよりは館とでもいったほうがいいような建物が見えてきた。この城は今から五百年ほど前に発狂した領主によって建てられたという。領主は数々の忌まわしき技に通じ、いにしえの秘術をもって密かに何かを企てていたらしい。
当時、付近の村から子供が相次いで行方不明になるという事件が頻発したらしい。その後、領主はいずこともなく消え、城だけが残った。以後その城の所有者は必ず発狂し、失踪して消えたと言う。1975年に ニュルンベルグ市の所有となってからは怪事件は報告されていない。


なぜこんな場所に来てしまったのだろうか。城の入り口の前に佇み鉛色の空に突き刺さる望楼を見上げながら私は少し後悔していた。JACK OR JIVEのライブがここで開かれるのだ。彼らの謎を解く鍵があるかもしれないと私は衝動的にはるばるドイツまでやってきたのだが、その会場となる城には人の気配が全くなかった。
日付を間違えたのだろうか。

心配になってきた頃、数名の黒づくめの人影が門をくぐって近づいて来るのがみとめられた。どうやらライブの観客らしい。見ていると、黒づくめの人は後から後からやってきて城の中へと入っていく。
私も彼らにならい入っていくことにした。無限に続くかとも思われる螺旋階段を降りていくと途端に広大な空間が開けた。発狂した領主が掘らせたものだろうか、ゴシック教会の内陣を模したような、地下聖堂である。蝋燭の乏しい光ではどれだけ広いのかは知ることができない。やがて、祭壇の上に黒づくめで巨大な草刈鎌を抱えた人影が現れた。CHAKOさんだ。あまりの異様な雰囲気に言葉を失っていると私の両脇の黒づくめに腕をつかまれて祭壇の前にひきずり出された。やっぱりこれはどう考えてもライブじゃない。 おそろしく古い、樫でできた台に縛り付けられ、巨大な鎌を振りかざしたCHAKOが青褪めた顔でゆらゆら近づいてくる。 「やっぱりこれは悪魔教の儀式だったんだ!」

夢の中で絶叫して目がさめた。まだドイツ行きの飛行機の中だった。本当に叫んでいなかったろうかと、心配になって周囲を見まわしたけれどもなんともなかったみたいだ。隣の席を見てぎょっとした。夢の中で死神の格好をしていた本人が眠っている。たまたま飛行機の便が同じになってしまったために、これから見に行くライブの音楽家と飛行機の中で同席するというなんとも奇怪なことになってしまった。アホが移ってライブが中止になるといけないので私はできるだけ発言 (近所のため池に目を合わせるだけで死ぬカメが住んでる、というような話) を控え沈黙を守っていたのだが、その反動でさっきのような夢を見てしまったのだろう。これからドイツで行われる二箇所のライブを見てまわるのだが、果たして無事に帰れるのだろうかと心配になった。 
JACK OR JIVEのライブはとにかくはじめてだし、もしかしたら本当に悪魔教かもしれない。それはきっとCHAKOさんから見ても同じことで、私がもしかしたらおなかの中に数キロぶんの爆薬を内蔵した緑の旅団の工作員かもしれない、と疑っているに違いない。CHAKOさんはそういう事態をも想定して、飛行機が墜落したときの危機管理マニュアルまで作成していた。メンバーがそれぞれ別の飛行機で現地入りするという念の入りようである。また、メンバーのどちらかが死亡した場合の対応も決められていた。まったく、どこぞかの国の首相にもぜひ見習ってほしいものだ。


そうして、私がイスラム過激派じゃなかったおかげで飛行機は無事にフランクフルトに到着した。一番こわい入国審査をわたしは無事パスしたけれども、黒づくめでパンクみたいな格好をしCHAKOさんはなぜか厳重に質問をされた。たぶんニューハーフと間違われたのではと自己分析するCHAKOさんはきっと、自分にも厳しい人に違いない。ゲートの外にはドイツのJACK OR JIVE超熱烈ファンのSONJAさんともう一人ドイツ人がCHAKOさんを待ちうけていた。SONJAさんは形容するならば、「いっしょに山の中を歩いたらUFOがでてきて未来宇宙帝国に連れ去られてとんでもない目にあいそうな」感じの人だ。ここで私はCHAKOさんと分離して数日後にはステージの上と下と言う過酷な環境で再会することになっている。急に心細くなった私はアムステルダムに行きそうになったけれども、意志のちからでニュルンベルグ行きのICE特急に乗りこんだ。
途中、TAKAHASIという日本人を探している女性がいて、「そうです、わたしがTAKAHASIです」といってついていきそうになったけれどもやはり意志のちからで持ちこたえた。さらにホームに降りるときに「荷物をもってくださらないかしら、ビッテ」 と言って来た金髪碧眼の女性のあとをどこまでもついていきそうになったけれどもこれも意志のちからで撃退した。今回はとにかくライブを見なければいけないのだ。それには大変高度な精神力が要求される。一瞬たりとも気が抜けない過酷な旅行だ。弥冶さん喜多さん、それに水戸黄門が頭の中に現れはげましてくれる。 「弥冶さん、喜多さん、かまわないからやっておしまいなさい」 ヤツ等は一人旅のときの頼もしい味方だ。


(このあと本題とは関係のない事件がたくさんおきるけれども省略していきなりライブ当日にジャンプ)


ライブ会場の探索は困難を極めたけれども、ツーリストインフォメーションに いったら一瞬で解決した。日が落ちるとネオナチや狼が怖いので早くに出発。動物園を見てそこからわけのわかんない道を標識を頼りに歩き回って会場についたのは午後四時。ライブの始まる実に5時間前である。到着時間が少し早すぎたものの、どんぴしゃで目標に到達できたので わたしは大満足。
しかし、会場の名前を示す標識もなにもないのでたいそう不安になる。日付が遅かった場合、この場で切腹だ。早かった場合は狼やネオナチやロマ人のひとさらいにおびえながらこの地で ビバークしなければならない。どちらもおそろしい。不安になるとおなかが すくのでパンを買ってお城の入り口に座って食べていたら不審に思って出てきた管理人のおばちゃんに中に入っていいと言われた。そして今夜日本人のライブが行われることもききだして一安心。
お城のなかはシステムキッチンや会議室があって拷問室や地下牢がなかったので少しがっかり。猿がドクロを持ってるイカしたレリーフのある部屋を見つけてそこで少し眠る。

山羊のオバケにおっかけられる夢を見て目がさめると、すでに会場に黒づくめの人が二人やってきていた。互いに自己紹介するが、 お互いに名前を一瞬で忘れた。ビールを運んで椅子を運び、なんだかくらくら してきたのでビールを失敬して飲みながら、「君達はGOTHか?」と単刀直入に質問する。すると彼ら二人は「ニヒト。私達はGOTHではない。この黒色はそういう意味ではない」と即座に否定した。 
しかし、その後続々現れた人達は全員どういうふうに解釈してもGOTHとしかとれない服装をしていたので、このあたりのことは大変微妙な問題なのかもしれない。
しまいには観客の中で黒くない人は私だけになってしまうのだが、私は心が黒いのでたぶん大丈夫だ。さらにドクロの部屋で山羊のオバケを見ながら待機していると、日本語が聞こえ始めたので降りて挨拶。JACK OR JIVE に光学姉妹が集まっていた。観客で日本人は私だけだ。心細くなったのでカルトチェックを頭の中で 繰り返したけれども、大丈夫、これは悪魔教の儀式ではないという結果がでた。やばくなったらアルコールタバコ火器局に通報すればいいんだ。頭の中で水戸黄門も「完璧だ。」と言っている。 


(このあとまたオバケに追いかけられたりするけどすっ飛ばしていきなりライブ開始)


会場にはGOTHばっかり、黒以外の服はわたし一人だけだ。80人くらいだろうか。 パンクっぽい人もいる。
スキンヘッドも数人。本場のGOTHは少し違うぜと興奮する。照明が暗くなってなんか洞窟の中の水の音みたいな音が流れてプロジェクターからは何かが降ってくる映像が投射されている。観客は もう身じろぎひとつせず静まり返ってる。
そうしてとうとう東洋風の衣装を着たCHAKOさんが登場した。それから躊躇せずライブ突入!ライブについてはあまり私の印象を書いても仕方がない。たぶんライブの剥製か毛皮みたいなものしか伝えられないと思う。でも少しだけ。アルバムとはまったく別物というのがひとつ。当然だけれども CHAKOの身振りや表情が入ってくるし、生の声の迫力とか会場の雰囲気、そんなものまでもうまく操っている気がした。もうひとつは光学姉妹の存在。姫路のビデオを見たときはあまりピンと来なかったけれども(私がアホだからかもしれない)実際のを見て納得。曲順も巧みで気がついたらライブが終わっていたという感覚。


後半のCHAKOの衣装は真っ白!客席の真っ黒を意識しているのかどうかは わからなかったけれどたいへんおもしろかった。唯一心残りはアンコールがなくて余韻もさめないうちに照明がばしーんとつけられて しまったこと。どうも早く帰りたいスタッフがいたようだ。

気がついたら12時で終電なくって狼が怖いので河童みたいな髪型のナイスなドイツ人に送ってもらった。どうも彼はLOW LIFEというレーベルの首謀者のようだ。短いドライブでいろいろ話しているうちにLOW LIFEの名前の由来を聞いてみた。ローテク大好きだからそういう名前にしたそうだ。でも、今度CDをだすのでCDはハイテクなのでたいそう困っているそう。

車を降りてケバブを買ってホテルに帰る途中、UFOにさらわれて気がついたら二日後のヴィスバーデンにいた。ヴィスバーデンといったらかの有名なUFO小説が始まる場所ではないか。やっぱりあの話は本当だったんだ、と慄然としつつ中央駅 構内の会場に向かう。駅の中は広い。改札がないので会場を探すのも大変だ。前代未聞の列車ライブなのか、と列車をのぞいて見たりしているうちに壁にチラシを発見!チラシの近くのドアをこれが入り口!と開けて見たらトイレだった。一度頭を冷やしに外に出たらやっと会場発見.!今度はWHITE RABBITという集団が運営しているらしい。そこらじゅう生ニンジンだらけだ。SONJAさんに 「あなたはSPECIALだからこれをつけてなさい」と「スペシャル」と書かれた札を首からかけられた。この場合、スペシャルの意味は「特殊」「埒外」という 意味だろう。でも仲間はずれは大好きなので妙にうれしくなる。 「放射能を浴びて特殊になっちまったぜ!」 とかぶつぶつ言っているうちにリハーサルが終わったらしく、出てきた皆様に挨拶。UFOの件は秘密に しておいた。

今度の会場はニュルンベルグの5倍くらい広くて天井が高くて、歌を聴くということに関しちゃニュルンベルグの方が良かったなと思った。今度の観客はニュルンベルグとはまた一味違っていた。スキンヘッド率が 5%くらい上昇。ラバーとかラテックス黒服の人も若干。ドイツ女学生風 のスタッフも発見。SSのドクロマークも発見!こういうのはドイツじゃ 見つかったら即刻逮捕みたいなので彼らは命がけだ。これだけバリエーションに富んでいてもそれでも全員真っ黒。 ここでもまた私は一人だけ浮いていた。でもぼくは「特殊」の札を 下げているので平気だ。 

今回のライブは椅子がなくて、前の人は座って後ろの人が立って見ると いう形式らしい。前の方の人はスキンヘッドでもSSマークでもちゃんと後ろの人に配慮してちゃんと見えるように座っている。すごいぜドイツ。またまたライブは夢みたいにあっという間に終わった。しかし今回はアンコールが数曲あった。私は率先して手を叩くように頼まれていた(サクラっていうの?)けれども、そんなのはぜんぜん必要なかった。観客はみんな礼儀正しく熱狂的でライブは大成功!
JACK OR JIVEのライブが終わった後は WHITE RABBITと光学姉妹のDJ対VJの対決みたいだった。踊っているSONJAさんが印象的。終電を見送って帰りはタクシーにして最後まで見届けることに決定。光学姉妹の福家さんに馬鹿話を披露。福家さんが私より二つも年下であることを発見されて自慢されてしまう。何を話したのかはよく覚えていないけど、思い出したらきっと後悔のあまり発狂するので思い出しません。CHAKOさんは後半のバクハツした髪型のままでマイクを持ってWHITE RABBITのかける音楽にあわせて歌っていたりした。その髪型で白いステージ衣装を着ていないCHAKOさんがなぜか本当の悪人に見えたので愉快になる。

こうしてドイツ二回目のライブも無事終わった。その後私はライン川でUFOの集団に襲撃されたりいろいろな目にあったけれども、本題とは関係ないので書きません。


付録  JACK OR JIVE ドイツファンは本当にGOTHなのか??

彼等の全員に聞いたわけではないけれども、一部の人は顔色を変えて否定していた。
でも、黒づくめの服装が観客の99%を占めているのを見ると、どこからどう見てもGOTHだ。
でもよーく見るとネオナチっぽかったり、フェチっぽかったりぜんぜんわからなくなる。
JACK OR JIVEのライブには黒!というコードが暗黙の了解で決められているのではないかという
仮説をたててみる。
でもぜんぜん何も説明 していないので取り消し。
JACK OR JIVEが紹介されている雑誌などを鑑みるに、やはり彼らはGOTHだ!という
結論を出さざるを得ない。
ちゃんと雑誌のサブタイトルにGOTHICって書いてあるもの。
それを読んでやってくる人もやっぱりGOTHなんだろう。
日本の一部GOTHは完全に少女趣味の世界だったけれども、ドイツのは年配の人もGOTHだったり
スリットの入った服でセックスアピールしていたり まったく違っていたので興味深かった。